事務事業評価の優良事例と東京都市区町村の評価

各自治体における事務事業評価の整備において、最初のステップは、正確で意味のある文書の公開です。
この段階で特に重要なのは、既存の優良事例からベストプラクティスを選定し、それを基に業界標準を確立すること、つまり、標準化(規格化) を推進することです。
これにより、評価の均一化、属人化の解消、公平性と透明性の確保が促進され、客観的な判断が可能となり、より信頼性の高い評価体制の構築につながります。
事務事業評価標準シートの草案
評価シートの評価項目
このページに登場する「事務事業評価」の評価に関する表の列について、詳細は次の通りです。
列名 | 説明 |
---|---|
対象年度 | 事務事業評価の対象となる事務事業が実施された年度(2024/12/31 時点の最新版) |
公開速度 | 次の基準に基づき 0 ~ 1 の範囲で算出されます。
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評価対象 | 次の3種類のいずれかの値を取ります。値ごとに 0 ~ 1 の範囲のスコア値に変換されます。
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PDCA | Plan → Do → Check → Action の形になっていれば✅そうでなければ❌ |
活動指標 | 活動指標として明記されていれば✅そうでなければ❌ |
成果指標 | 成果指標が存在すれば✅そうでなければ❌ |
人件費記載 | 人件費が記載されていれば✅そうでなければ❌ |
財源記載 | 財源が記載されていれば✅そうでなければ❌ |
様式点 | 前述の記載項目の有無を重視し 0 ~ 1 の範囲で私が採点した値です。 |
様式分類 | 様式点による3種類の分類です。
|
一次評価 | 「公開速度 × 評価対象 × 様式点」の式により算出します。 |
評価総額 | 評価シートに書かれている費用の総額(事務事業費用の総額)です。 |
歳出決算額 | 当年度の歳出決算額です。 |
歳出評価率 | 「評価総額 ÷ 歳出決算額」の式により算出します。100% を超える場合 100% に丸めます。 |
最終評価 | 「一次評価 × 歳出評価率」の式により算出します。値は 0 ~ 1 の範囲になります。 |
優良事例
現時点で、評価シート様式の標準に相応しい事例を上げています。 他にもあれば教えて下さい。
都道府県 | 市区町村 | 対象年度 | 様式点 | 備考 |
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兵庫県 | 西宮市 | 令5 | 1.00 |
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茨城県 | 那珂市 | 令4 | 1.00 |
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一次評価
「公開速度」と「評価対象」「様式点」による一次評価です。
都道府県 | 市区町村 | 対象年度 | 公開速度 | 評価対象 | PDCA | 活動指標 | 成果指標 | 人件費記載 | 財源記載 | 様式点 | 様式分類 | 一次評価 |
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兵庫県 | 西宮市 | 令5 | 1.00 | 事業 | ✅ | ✅ | ✅ | ✅ | ✅ | 1.00 | 標準 | 1.00 |
東京都 | 杉並区 | 令5 | 1.00 | 事業 | ✅ | ✅ | ✅ | ✅ | ✅ | 0.80 | 準標準 | 0.80 |
東京都 | 板橋区 | 令5 | 1.00 | 事業 | ✅ | ✅ | ✅ | ✅ | ✅ | 0.80 | 準標準 | 0.80 |
東京都 | 台東区 | 令5 | 1.00 | 事業 | ✅ | ✅ | ✅ | ✅ | ✅ | 0.75 | 準標準 | 0.75 |
東京都 | 墨田区 | 令5 | 1.00 | 事業 | ✅ | ✅ | ✅ | ✅ | ✅ | 0.70 | 参考 | 0.70 |
東京都 | 立川市 | 令5 | 1.00 | 事業 | ✅ | ✅ | ✅ | ✅ | ✅ | 0.70 | 参考 | 0.70 |
東京都 | 中野区 | 令5 | 1.00 | 事業 | ✅ | ✅ | ✅ | ✅ | ❌ | 0.60 | 参考 | 0.60 |
東京都 | 荒川区 | 令5 | 1.00 | 事業 | ❌ | ❌ | ✅ | ✅ | ✅ | 0.60 | 参考 | 0.60 |
東京都 | 葛飾区 | 令5 | 1.00 | 事業 | ✅ | ✅ | ✅ | ✅ | ✅ | 0.60 | 参考 | 0.60 |
東京都 | 国立市 | 令4 | 0.75 | 事業 | ✅ | ✅ | ✅ | ✅ | ✅ | 0.70 | 参考 | 0.52 |
東京都 | 足立区 | 令5 | 1.00 | 事業 | ✅ | ❌ | ✅ | ✅ | ✅ | 0.50 | 参考 | 0.50 |
東京都 | 府中市 | 令5 | 1.00 | 事業 | ✅ | ❌ | ✅ | ✅ | ✅ | 0.50 | 参考 | 0.50 |
東京都 | 武蔵野市 | 令4 | 0.75 | 事業 | ✅ | ✅ | ✅ | ✅ | ❌ | 0.60 | 参考 | 0.45 |
東京都 | 西東京市 | 令4 | 0.75 | 事業 | ✅ | ❌ | ✅ | ✅ | ✅ | 0.60 | 参考 | 0.45 |
東京都 | 豊島区 | 令5 | 1.00 | 事業 | ✅ | ✅ | ✅ | ❌ | ✅ | 0.40 | - | 0.40 |
東京都 | 昭島市 | 令4 | 0.75 | 事業 | ✅ | ❌ | ✅ | ✅ | ✅ | 0.50 | 参考 | 0.38 |
東京都 | 稲城市 | 令4 | 0.75 | 事業 | ✅ | ❌ | ✅ | ✅ | ✅ | 0.40 | - | 0.30 |
東京都 | 東大和市 | 令5 | 1.00 | 事業 | ✅ | ❌ | ✅ | ❌ | ✅ | 0.30 | - | 0.30 |
東京都 | 江東区 | 令4 | 0.75 | 施策 | ✅ | ❌ | ✅ | ✅ | ❌ | 0.60 | 参考 | 0.22 |
東京都 | 武蔵村山市 | 令4 | 0.75 | 事業 | ✅ | ❌ | ✅ | ✅ | ❌ | 0.30 | - | 0.22 |
東京都 | 中央区 | 令5 | 1.00 | 事業 | ✅ | ❌ | ✅ | ✅ | ❌ | 0.20 | - | 0.20 |
東京都 | 品川区 | 令4 | 0.75 | 事業 | ✅ | ❌ | ✅ | ✅ | ❌ | 0.20 | - | 0.15 |
東京都 | 港区 | 令4 | 0.75 | 事業 | ❌ | ❌ | ✅ | ❌ | ✅ | 0.20 | - | 0.15 |
東京都 | 日の出町 | 令4 | 0.75 | 事業 | ❌ | ❌ | ✅ | ❌ | ✅ | 0.20 | - | 0.15 |
東京都 | 小平市 | 令5 | 1.00 | 施策 | ✅ | ❌ | ✅ | ❌ | ❌ | 0.30 | - | 0.15 |
東京都 | 青梅市 | 令3 | 0.50 | 事業 | ✅ | ❌ | ✅ | ✅ | ✅ | 0.30 | - | 0.15 |
東京都 | 新宿区 | 令5 | 1.00 | 施策 | ✅ | ❌ | ✅ | ❌ | ✅ | 0.20 | - | 0.10 |
東京都 | 小金井市 | 令5 | 1.00 | 事業 | ✅ | ❌ | ✅ | ❌ | ❌ | 0.10 | - | 0.10 |
東京都 | 八王子市 | 令5 | 1.00 | 事業 | ❌ | ✅ | ✅ | ❌ | ❌ | 0.10 | - | 0.10 |
東京都 | 狛江市 | 令5 | 1.00 | 事業 | ❌ | ❌ | ❌ | ❌ | ❌ | 0.10 | - | 0.10 |
東京都 | 北区 | 令4 | 0.75 | 事業 | ❌ | ❌ | ✅ | ❌ | ❌ | 0.10 | - | 0.08 |
東京都 | 国分寺市 | 令4 | 0.75 | 事業 | ❌ | ❌ | ✅ | ❌ | ❌ | 0.10 | - | 0.08 |
東京都 | 福生市 | 令4 | 0.75 | 事業 | ❌ | ❌ | ✅ | ✅ | ✅ | 0.10 | - | 0.08 |
東京都 | 羽村市 | 令4 | 0.75 | 事業 | ❌ | ❌ | ❌ | ✅ | ✅ | 0.10 | - | 0.08 |
東京都 | 千代田区 | 令5 | 1.00 | 施策 | ❌ | ❌ | ❌ | ❌ | ❌ | 0.10 | - | 0.05 |
東京都 | 調布市 | 令5 | 1.00 | 施策 | ❌ | ❌ | ✅ | ❌ | ❌ | 0.10 | - | 0.05 |
東京都 | 清瀬市 | 令4 | 0.75 | 施策 | ❌ | ❌ | ✅ | ❌ | ❌ | 0.10 | - | 0.04 |
東京都 | 瑞穂町 | 令4 | 0.75 | 施策 | ❌ | ❌ | ✅ | ❌ | ✅ | 0.10 | - | 0.04 |
東京都 | 世田谷区 | 令3 | 0.50 | 施策 | ✅ | ❌ | ✅ | ✅ | ✅ | 0.10 | - | 0.03 |
東京都 | 江戸川区 | 令5 | 1.00 | なし | ❌ | ❌ | ❌ | ❌ | ❌ | 0.40 | - | 0.00 |
東京都 | 三鷹市 | - | 0.00 | なし | ❌ | ❌ | ❌ | ❌ | ❌ | 0.00 | - | 0.00 |
東京都 | 多摩市 | - | 0.00 | なし | ❌ | ❌ | ❌ | ❌ | 0.00 | - | 0.00 | |
東京都 | 日野市 | - | 0.00 | なし | ❌ | ❌ | ❌ | ❌ | 0.00 | - | 0.00 | |
東京都 | 東久留米市 | - | 0.00 | なし | ❌ | ❌ | ❌ | ❌ | 0.00 | - | 0.00 | |
東京都 | 東村山市 | - | 0.00 | なし | ❌ | ❌ | ❌ | ❌ | 0.00 | - | 0.00 | |
東京都 | 町田市 | - | 0.00 | なし | ❌ | ❌ | ❌ | ❌ | 0.00 | - | 0.00 | |
東京都 | あきる野市 | - | 0.00 | なし | ❌ | ❌ | ❌ | ❌ | 0.00 | - | 0.00 | |
東京都 | 檜原村 | - | 0.00 | なし | ❌ | ❌ | ❌ | ❌ | ❌ | 0.00 | - | 0.00 |
東京都 | 奥多摩町 | - | 0.00 | なし | ❌ | ❌ | ❌ | ❌ | 0.00 | - | 0.00 | |
東京都 | 練馬区 | - | 0.00 | なし | ❌ | ❌ | ❌ | ❌ | ❌ | 0.00 | - | 0.00 |
東京都 | 渋谷区 | - | 0.00 | なし | ❌ | ❌ | ❌ | ❌ | ❌ | 0.00 | - | 0.00 |
東京都 | 大田区 | - | 0.00 | なし | ❌ | ❌ | ❌ | ❌ | ❌ | 0.00 | - | 0.00 |
東京都 | 文京区 | - | 0.00 | なし | ❌ | ❌ | ❌ | ❌ | ❌ | 0.00 | - | 0.00 |
東京都 | 目黒区 | - | 0.00 | なし | ❌ | ❌ | ❌ | ❌ | ❌ | 0.00 | - | 0.00 |
最終評価
「一次評価 × 歳出評価率 = 最終評価」を求めます。
「評価総額」の計算には手間がかかるため、一部の自治体に限定して記載しています。要望があれば、追加の自治体情報について検討しますので、本ページ下部のフォームからお気軽にご連絡ください。
都道府県 | 市区町村 | 対象年度 | 一次評価 | 評価総額 | 歳出決算額 | 歳出評価率 | 最終評価 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
東京都 | 杉並区 | 令5 | 0.80 | ¥372,122,168,000 | ¥340,141,864,095 | 100.00% | 0.80 |
兵庫県 | 西宮市 | 令5 | 1.00 | ¥227,682,463,448 | ¥290,324,183,000 | 78.42% | 0.78 |
東京都 | 立川市 | 令5 | 0.70 | ¥148,562,986,000 | ¥169,771,722,343 | 87.51% | 0.61 |
東京都 | 小平市 | 令5 | 0.15 | ¥107,821,234,000 | ¥128,057,981,497 | 84.20% | 0.13 |
東京都 | 昭島市 | 令4 | 0.38 | ¥12,079,618,000 | ¥74,151,079,763 | 16.29% | 0.06 |
東京都 | 清瀬市 | 令4 | 0.04 | ¥16,652,610,000 | ¥53,747,056,382 | 30.98% | 0.01 |
東京都 | 武蔵野市 | 令4 | 0.45 | ¥675,115,938 | ¥104,730,877,469 | 0.64% | 0.00 |
東京都 | 西東京市 | 令4 | 0.45 | ¥526,255,000 | ¥126,652,876,441 | 0.42% | 0.00 |
付録
主要な施策の成果
事務事業評価の公開がない場合は、決算書に付属する「主要な施策の成果」を説明する書類を確認してください。
この書類には、施策や事務事業ごとに費用と財源が記載されているはずです。
もしこの書類すら存在しない自治体であれば、「どこにいくらお金を使っているのか、住民に説明する意思がない自治体」であると言わざるを得ません。
事務事業評価のレベル分け
政治アナリストの渡瀬裕哉氏によるレベル分けです。
- 腐敗(事務事業評価公開無し)
- 臭いものに蓋(事務事業評価の部分公開)
- 役人仕事(事業費のみ公開、無意味な成果指標)
- 最低限の仕事(事業に人件費紐づけ、妥当な成果指標)
- 給料払っても良いレベル(上位の政策との妥当な関連性がある事業評価)
私の経験からすると、「事業に人件費紐づけ」や「上位の政策との妥当な関連性」は、実施している自治体も一定数ある印象です。
また、「妥当な成果指標」については、個別の事業レベルでは設定されている場合もありますが、全体として徹底されている自治体は見当たりませんでした。
そのため、実態としてはどれだけ評価が高くても「4(最低限の仕事)」止まりであり、「5(給料払っても良いレベル)」に達している自治体は存在しないというのが現状のように思います。
事務事業評価の今後の方向性
参議院議員・浜田聡氏による、参議院行政監視委員会での事務事業評価の今後の方向性に関する質問です。
事務事業評価をはじめとする行政評価の取り組みが衰退している理由として、以下の点が挙げられています。
- 行政の人的リソースの不足
- EBPM(エビデンスに基づく政策立案)の推進によるシフト
行政の人的リソースの不足
毎年 500 ~ 1,000 件を超える事務事業を評価することは、確かに膨大な労力を要する作業です。しかし、それを理由に事業の説明や振り返りを省略することは適切ではありません。
事務事業評価は、行政の透明性や説明責任の確保に不可欠なプロセスです。単なる負担軽減を理由に縮小するのではなく、効率的な運用体制を整備し、必要な評価は確実に実施すべきです。
EBPM の活用が推進されているため、そちらにシフトしている
EBPM の推進により、データに基づく政策判断が重視されるようになった結果、従来の事務事業評価の役割が相対的に薄れているという状況です。
しかし、EBPM は事前評価であり、事後評価である事務事業評価が軽視されてよい理由にはなりません。
また、本当に EBPM を活用した施策であることを証明するためには、事務事業評価シートのような事業単位の記録が不可欠です。 現状、それが整備されていない以上、EBPM の活用を理由に事務事業評価を縮小するのは時期尚早でしょう。
EBPM と事務事業評価は対立するものではなく、むしろ相互に補完すべきものです。 例えば、事務事業評価シートにエビデンスとして EBPM データプラットフォームへのリンクを含めることで、その事業の正当性を強力に支援することができます。
事務事業評価の適切な運用なしに EBPM を推進しても、政策の効果検証が不十分になりかねません。 今後は、EBPM と事務事業評価の連携を強化し、より実効性のある評価体制を構築することが求められます。